首尾一貫感覚

先日、各都道府県にある「産業保健推進センター」での講座で教えて頂いた内容です。

20世紀後半に、医療社会学・健康社会学者であるアントノフスキーが、1987年に健康を保持増進させる一つの要因として「首尾一貫感覚(Sense of Coherence)(SOC)」を提唱しました。

この概念は、ストレスの対処と健康保持との関係を解いていることが特徴的で、世界の保健医療で使われています。 SOCとは、「人生で起こるさまざまな出来事や環境を、一貫したものと捉えた感覚」であり、次の3つの要素で成り立っています。

アントノフスキーはSOCの構成要素を「有意味感」「把握可能感」「処理可能感」という3つの感覚で説明しています。

「有意味感」とは、どんな辛いことに対しても、意味を見いだせる感覚です。 (意味を見いだす力)

「処理可能感」とは、自分がよかれと思う行動を最後まで成し遂げられるという感覚です。(何とかなると考える力)

「把握可能感」とは、どんなことも自分の行動と結果が関連しているという感覚です。(先を見通す力)

この3つから考えても、いかに、自分に起こった様々な出来事を ”どう捉えるか” で、その人の健康が良い方向にいくか、悪い方向にいくか、決まってくるとは 面白いですね。

「こんなこともあると思っていたよ」

「大丈夫、なんとかなる」

きっと、この失敗にも大きな意味があるはずさ」

このよう考えていきたいものですね。

免疫力を高める7つの方法

昨日から、めっきり寒くなりました。

こうやって、寒くなったり、暖かくなったりしながら、春に近づいていくのでしょう。  

インフルエンザが流行っても全く罹らない人がいれば、数日間高熱を出しながら一歩も動けない人もいます。 また、よく風邪をひく人もいれば、年に数回軽い症状だけで済む人がいます。 このような違いは、個々の「免疫力」の差によって生じると言われています。

ウイルスに感染すると、人体はすぐに進入を防ぐための防御体制に入ります。 免疫系は体を守る役割をします。この防御体制は、常に様々な菌やウイルスから体を守ろうと働いています。 様々な菌が身の回りの至るところにあり、体内に侵入してしまうこともありますが、私たちは何事もなく生活できています。

このように、健康を維持するためには、ウイルスと戦う免疫系を強化することが重要です。

免疫力を高めるための7つの方法

1.喫煙

喫煙は免疫系を損傷させるだけでなく心血管疾患・自己免疫機能損傷・呼吸器疾患・神経疾患とも関連しています。 喫煙と関連する疾患の症状としては息切れ・長引く咳・頻繁な風邪等が挙げられます。 特に喫煙で吸い込むニコチンは樹状細胞などの獲得免疫細胞の免疫監視機能に影響を及ぼすことで、免疫抑制剤のような働きをして免疫系の活動を鈍らせます。つまり、たばこを吸うことは免疫系の働きを邪魔することと同じと言えるのです。

2. 適量の飲酒

適量のお酒を嗜むことはストレスを軽減させることもでき、雰囲気を楽しむには良いかもしれませんが、飲みすぎると免疫系を損傷させてしまいます。適量以上のアルコール摂取は必須免疫経路を邪魔し、感染に対する身体の防御能力を低下させます。

3. ストレスを減らす

ストレスは健康に関する全ての要素に悪影響を及ぼします。更に、意識できないストレスが徐々に体を蝕んでいくことも危険です。様々な身体システムの中で体の辛い状態をコントロールするのが免疫系です。特に、免疫系の細胞はコルチゾールのようなストレスホルモンを認識する受容体を持っています。急なストレスは、免疫系を乱します。

4. 十分な睡眠

適切な睡眠をとらないと、風邪やインフルエンザなどの感染リスクが高くなるだけではなく、ウイルスや細菌の感染からの回復速度も遅らせてしまいます。睡眠中に免疫系が強化され、有害要素をフィルタリングする役割を持つ免疫器官であるリンパ節にT細胞を移動させます。 T細胞は体に炎症反応があるときやストレスを感じるときに作用するサイトカインを生成しますが、睡眠時間が足りないとサイトカイン生成量が減り、免疫系は更に損傷されます。

5. 定期的な運動習慣

健康的な食事と定期的な運動を行って筋肉量が増えると、免疫系が疾患と戦って健康を守ることに役立ちます。逆に、あまり運動をしないで筋肉量が落ちてしまうと病原菌やウイルスから体を守ることが難しくなるでしょう。 加齢に伴い身体の様々な能力は低下していきますが、免疫力も例外ではありません。しかし、高齢者において定期的な身体活動は加齢の影響を抑え、感染や疾患に対する免疫機能を強化するという研究結果もあります。

6. 健康的な食事

体は適切に機能するためにエネルギーを必要とします。このエネルギーは食事を取るとカロリーという形で体に提供されます。エネルギー摂取が足りないことは、微量栄養素欠乏及び免疫系と主要身体機能損傷の原因となります。 世界的に、栄養不良は免疫欠乏の最も大きい原因として挙げられています。 ビタミンやミネラルなど適切な栄養分を摂取し、時間をかけて改善していくことが重要になります。緑黄色野菜やポリフェノールが豊富に含まれている食品には、酸化作用を打ち消す抗酸化物質が含まれています。 ビタミン・ミネラル・主要アミノ酸を含むタンパク質等をバランスよく摂取することで感染抵抗力を高めます。

7. 適切な体脂肪率の維持

過剰なエネルギー摂取は炎症性疾患及び自己免疫疾患のリスクを高めると報告した研究もあります。 健康体の理想的な体脂肪率は、男性10~20%、女性18~28%の間です。体脂肪率が高すぎると、免疫反応の調節が上手くいかなくなってしまう恐れがあります。 運動と食事で体脂肪量を減らしつつ、筋肉量を増やすことで免疫機能を強化することができ、 長期的な健康維持に繋がります。

免疫系の健康を維持するために、7つの免疫力を高める方法を挙げましたが、人体の免疫系は健康を守り、恒常性を保つために休むことなく動いています。

このような免疫系の働きをより良くするために、できることから実行してみてはいかがでしょうか。